POSTED ON 2018年10月16日 1 MINUTE READ BY SIXTYMAGAZINE TEAM
ファッションスタイリストとして8年以上ものキャリアを積んだのち、フォトグラファーに転身。写真集の出版や個展の開催、ファッションブランドとのタイアップなど更なる活躍の幅を広げている東海林広太さんに、仕事についての考え方や写真に対する想いを伺った。
ー少年時代はどんな事に興味がありましたか?
小、中学生の頃はバスケットボールに夢中でした。出身は千葉県で都会でも田舎でもない、いわゆる地方都市出身です。
ファッションやアートなどのカルチャーに全く縁の無い環境で育ちました。
ー写真を仕事にしようと思ったきっかけはなんですか?
元々ファッションスタイリストとしてのキャリアが8年程有り仕事のなかで写真と関わるなかで写真に惹かれていきました。
スタイリスト時代から、服自体が好きと言うよりもひとつのビジュアルを作り上げることが好きでしたし実際撮影に関してのディレクションもしていました。
ディレクションをしていて実質的な絵作りにもっと直接的に関わりたいという欲求が写真を撮り始めた一つの理由です。あともうひとつのきっかけはある写真家との出会いと別れも写真を撮りたいと思う大きなきっかけになりました
ー スタイリストとフォトグラファーとでは、表現において違いはありますか?
自己表現という部分では近い部分もあるかと思いますがプロセスやアウトプットの形では違う部分もあるかと思います。
ー被写体との距離の取り方について意識していることはありますか?
常に考えていますが人でも景色でも物であっても正しい距離というのはあるとは思います。ただそれは常に一定では無いとも思います。
ー自分らしい写真を撮ることと、被写体らしさを出すことの配分はどのようにしていますか?
自分らしさというのは正直わからないです、とても曖昧なものだと思う。被写体自身の持つパーソナリティと僕が感じる被写体の魅力をどちらもきちんと10分の10写したいという気持ちで撮っています。ポートレートは拠り所は被写体重視ですね。
ー東海林さんは、写真家『荒木経惟』さんがお好きと伺っていますが、彼のミューズとされてきたモデル『KaoRi』さんの告発文(荒木経惟からの精神的虐待などの内容がKaoRiさんの公式ブログ内で公開された)をお読みになって以降は、東海林さんの中で彼の写真に対する見方に変化はありましたか?
彼の作品に関しての想いは全く変っていないです。僕自身、彼の一部の写真や言葉からもの凄く影響を受けています。ただ一人の人間としてきちんと荒木さんからの答えは聞かせてほしいなとは思ってます。
ー何故、荒木経惟さんの写真に惹かれるのでしょうか?
センチメンタルだから
ー荒木経惟さんの作品のうちで特に好きなものはありますか?
空景/近景(1991年)
色景(1991年)
食事(1993)
陽子さんの形見のコートを着たバルコニーでのセルフポートレートの写真は中でも特に好きな写真です
ー東海林さんの中で『良い写真』とは何ですか?
今まで見ていた視点からまた新たな視点を魅せてくれる写真、そしてそれがまた他の誰かの視点に共有されるような写真が僕に撮って良い写真です。
写真表現に関して中平卓馬のこの言葉がとても大きな指針となっています。
『一枚の物の影がそれを見る者の生きる<生>の奥底のどこかで1点コレスポンドする、そのひそやかな喚起力が写真なのかもしれません。そこにある者は<悲しみ>を見、<優しさ>を見て、それを共有する。ただそれだけのことなのかもしれません。しかしぼくはそれ故にこそ、その程度のもので写真がある故に写真を愛します。自らが感応して一枚の写真を撮る。それを見る者が偶然にそこに自分の<生>のイメージをよみとる。このようないくぶんペシミスチックなコミュニケーションの故にぼくは写真を愛し、また写真を撮ってゆきたい、と思います』中平卓馬
ー過去に『Beautiful』というテーマで個展をされていますが、東海林さんの『美しさ』は当時と今では変化はありますか?
根本的な考えは変わっていないと思いますがより複雑になっている気はします。僕の中で『美しさ』は、定義出来ない・推し量れない・そして決してコントロール出来ないものです。
それは人であれば相手にもよるし、景色であれば毎日変化するし全ての事に関して同じ時は無いという意味では美しさは常に存在していると思います
ースタイリスト・フォトグラファーになって良かったと思う事は何ですか?
この仕事に限らずだと思いますが、何かに夢中になっている一瞬、自意識から解放される事です。
ー好きなことを仕事にしようと日々努力する若者達にメッセージをお願いします。
やりたい事がはっきりしている人は現実的な障害がない限り思いきりやれば良いと思います。今、やりたい事が無い人は別にそれでも良いと思います。自分できちんと責任が取れるなら他人は関係ないと思います。
写真に対する熱い想い、リアルな東海林広太の今を垣間見た。年内には現在進行中のプロダクトに関する個展も開催予定。次々と生み出される、写真界に一石を投じる東海林さんの作品たちに今後も目が離せない。
東海林広太(しょうじ こうた)
フォトグラファー
1983年、東京生まれ。アシスタントを経て、2007年にスタイリストとして独立。ファッション誌からカタログ、コマーシャルまで国内外を問わず幅広く活躍した後、2014年より独学で写真をスタート。自らスタイリング、撮影を手掛けたポートレートシリーズを撮り始め、現在では多くの媒体でも活躍している。
Instagram:@ko_ta_s
【年表】
2007年〜スタイリストとして活動
2014年〜フォトグラファーとして活動
2016年 展示『Radiant』開催
2017年 個展『Beautiful』開催
2017年 展示『Re:PLAY』開催
2018年 展示『Re:ACTION』開催
【information】