【21Questions × 東京駅】「自分で心が動くタイミングを作る」Lucky Kilimanjaro 熊木幸丸に聞いた21の質問。

ROCK IN JAPAN、COUNT DOWN JAPANへの出演をはじめ、2019年だけでも4つのシングルと2nd EPリリースし、今年誰よりも活発に音楽を創造してきたLucky Kilimanjaro。ボーカルの熊木氏は、俳優・仲野大賀氏が出演する東京ステーションシティ「はじまりは、ここからだ!」篇のCMソングも担当している。

今回F-MAGAZINEはLucky Kilimanjaroのボーカル、熊木氏にインタビューを行った。ライブハウスでもフェスでも東京駅でも、彼らは音楽で”毎日をおどらせる”。場所なんて関係ない、Lucky Kilimanjaroの音楽があれば、あなたの元にダンスフロアは出現するのだ。
感度の高いリスナーも、日常に物足りなさを感じているあなたも、エレクトロポップな心地よいサウンドと、前向きな心を日常に投影したリリックが生まれる原点を、是非読み解いて欲しい。

Q1:音楽に興味を持ったきっかけを教えてください

中1ぐらいの時に父からBUMP OF CHICKENのCDを薦められて、聴き始めたのがきっかけだと思います。そこがスタートかな。

Q2:以前ご自身のことを「ギターキッズだった」とおっしゃっていましたが、フィジカル楽器から、打ち込み系の楽器を取り入れられたきっかけはあるのでしょうか?

もともとは大学生の時にギターにちょっと飽き始めていたんです。ちょうどその頃、海外でファッションピットやインディーズエレクトラが流行り始めていて、「シンセすげーいいな、シンセこれから流行るなー」と思って買ったのがきっかけです。今はちょっと考え方が違いますけど、当時はギターよりもシンセの方が更に一歩違う表情の楽器だなと思えたんです。電子音ならではの綺麗な音やまっすぐな音が出るんで、そこも含めて凄い好きになりました。

Q3:Lucky Kilimanjaroは「世界中の毎日をおどらせる」というコンセプトを掲げられていらっしゃいますが、軽やかな電子音を出して行く流れでそのコンセプトが作られたのでしょうか?

Lucky Kilimanjaroは、シンセ主体のバンドをやりたいなと思ったのがスタートにあって、そのまま曲を作っていったら、踊れる曲が増えていったんです。自分でもあまり自覚ないまま、こういう曲を書くのが得意なのかな、好きなのかな、というのが芽生えました。しかもそれがお客さんに届くというのがあったので、世界中の毎日をおどらせるというコンセプトは割と最近作ったコンセプトですね。

Q4:熊木さん自身の個人的なテーマやコンセプトはありますか?

そうですね、Lucky Kilimanjaroのプロジェクト自体はかなり僕の主張が強いので、僕も同じように音楽で人をおどらせたり、ワクワクさせたいなっていうのはあります。でもやっぱり、シンセを始めたのもそうですけど、飽きないでやっていたいというのがあって。かっこよく見られるかというのは置いといて、自分が飽きない、やってて楽しいものをやろうと思っていますね

Q5:ちなみにギターキッズだった当時と今、音楽の聴き方は変わりましたか?

昔から、弾く音楽と聴く音楽は全然違うんです。あんまり弾くために聴いてなかったので、そんなに変わらないかなと思います。探し方もそんなに変わらない気がします。昔はギターが好きだったので、ギターのフレーズに集中しちゃうとこはありましたけど、今はやっぱり曲全体の質感とかを見るようにはなりました。

Q6:熊木さんから見たLucky Kilimanjaroの強みやアピールポイントは?

言葉がちゃんと人に届くように作っているので、そこまで解釈の余地を広くとっていないというか。僕の音楽を通して、お客さんのストーリーが入ってくることで、Lucky Kilimanjaroの音楽が成り立つというのは強みだと思ってます。
僕からの「こうしたらどう?」という提案が曲であって、それに対してお客さんのストーリーを乗せた時に、初めてお客さんの中で僕らの曲が完成するっていうのが、僕らの曲ですね。僕らだけでは完結しない、芸術作品として僕らが完成させるというよりかは、聴いてくれたお客さんも含めてLucky Kilimanjaroの音楽の形が出来上がるのが面白みですし、自分の中でいいなと思っている点ですね。

Q7:オーディエンスを見て、音楽が形になって行く実感はありますか?

そうですね。この1年結構、時間が分からない感じで進んでいったので(笑)、お客さんの形もそれぞれなんですよ。今年の1月~2月のお客さんさんも違うし、夏のお客さんも違うし、今来てくれているお客さんも違うから、もう僕が変化についていけてなくて(笑)。

Q8:今まで印象に残ったステージは?

やっぱりROCK IN JAPANですね。初めて今年の夏出演したんですけど、大きなフェスが初めてだったので正直不安だったんです。「人、来るかな?」みたいな。色々不安はあったんですけど、蓋を開けたら踊りに来てくれる人や良かったと言ってくれる人が沢山いて嬉しかったです。こういう風にLucky Kilimanjaroの世界観だったり、Lucky Kilimanjaroでお客さんが踊るっていう空間をもっと大きくしていきたいですね。

Q9:今回エキマチフェスに出演されるということで、東京駅でライブをされる訳ですが、この東京駅に思い出はありますか?

大学時代、授業が終わってから朝まで飲むみたいな生活をしていた時が結構あったんです(笑)。大学が神保町なんで、3時ぐらいに飲み飽きてきたら「ちょっと歩くか!」って、大手町まで歩いていたんです。東京駅のそれこそ丸の内のビルとか、早朝の全然人がいない街並みやビルに朝の青い感じが入ってくるのがとても綺麗だったんです。それが凄く好きで、「好きな東京の景色ってなんですか?」って聞かれたらよくその景色を答えています。早朝のビルの青い景色は凄く印象的です。

Q10:今回のステージでもそこに思いを馳せたり?

やっぱりそうなると思いますね。今でも東京駅に来ると綺麗だなと思いますし。休日の大手町も好きです。早朝の丸の内のビル群は人がいないのに、こんなにビルが大きいというか。そういうのってちょっと退廃的じゃないですか。そういうギャップすごく好きなんです。

Q11:普段から、街のギャップやその土地の雰囲気を意識されているのでしょうか?

初めて行ったところはやっぱり、どこも違う空気があるから意識はしますね。大手町や東京駅周辺、丸の内周辺の感じは他の街には無いですね。神秘的だと思います。

Q12:今回、東京ステーションシティCM 「はじまりは、ここからだ!」篇の楽曲を担当されていらっしゃいますが、制作するにあたって意識した点はありますか?

今回は上京した社会人。新卒というよりかは、ちょっと時間がたって25、26歳くらいの人、僕のちょっと下くらいの人たちが、転職などで東京に来た覚悟がコンセプトなんです。僕は、就職活動はしたのですが、結局就職しないでバンドをやったんで、あんまりその感覚はなかったんです。でも、バンドを続ける上で、「これでやっていくんだ」っていう覚悟はちゃんとあった。そういう決意や不安も含めて、みんなが勇気を持って進めるような音をイメージして作りました。

東京ステーションシティCM 「はじまりは、ここからだ!」篇

Q13:ちなみに今回の曲を作る上で、インスピレーションを受けたものはありますか?

去年の11月にリリースした『HUG』に収録されている「ひとりの夜を抜け」と今年の6月にリリースした『風になる』の間に制作したので、結構この2曲の間を彷徨ってて。でも、純粋に前向きになれる音を意識しました。
後は、マキアージュのCMで流れるストリングスが入ってる音が、凄く勇気をもらえる音だなと思って、ストリングスを入れてみるのもかっこいいなと。

Q14:日常で音楽に刺激を受けるものありますか?

本をよく読んでいます。月に7冊ぐらいかな?読むようにしています。最近は、アジアの死生観が面白くて、読んでます。面白いなと思うものは本に限らず何とか吸収してみようかなとは思います。
やはり自分の心が動いたところにしか、自分の新しいクリエイティブは生まれないと思っているので。それはアートでも、人との会話でもいいと思いますし、自分で心が動くタイミングを作るというのは普段から意識しています。

Q15:本を読み始めたきっかけは?

哲学の本もよく読むんですけど、最初、哲学を難しく考えていたんです。でも結局は、僕らが普段どうしたら幸せになれるのだろうとか単純な事で、そこが面白いなと。本を読むきっかけはそこですかね。文章も割と平易で分かりやすいですし。
僕が最近、哲学が面白いなぁと改めて思ったのが、哲学者をバキに例えたもので。バキは、日本の漫画なんですけど、各哲学者を戦わせてそれぞれの思想を浮き彫りにするんです。それが西洋哲学版も東洋哲学版もあって、それが結構面白いですね。

Q16:自分の心が動いた所に、メロディーや歌詞だったりを反映させたりも?

「こういう曲を作りたいなぁ」と自分の中でずっと思っていたイメージはあるけど、言葉だったり、テーマだったり、決め手が欠ける時に、そのイメージと自分の心の動きが急に合致して、曲が出来るタイミングが結構ありますね。自分の本当にやりたいと思っていたこと、もう一つの革新じゃないですけど、アイデアを入れるみたいな作業なのかな。最終的に、腑に落ちるとこまで行くために心の動きがたくさん必要だなと。

Q17:一番印象に残っている、イメージと心の動きが一致した楽曲はありますか?

どれだろうなぁ。その時に何に動かされたか覚えていなくて(笑)。でも、『FRESH』はずっとしっくりこないなと思っていたんですけど、すごい繋がったタイミングがあったんです。何かの本を読んで、「そういうことだ!」と思ったのがあって、ちょっと思い出せないですが(笑)。でも最近、東洋哲学の本を読んでいて、それで1曲出来た楽曲があります。

Q18:その曲に対して、そういった本はかなり影響するでしょうか?

自分の伝えたいメッセージだったり、自分の価値観に対して1つエッセンスが入るイメージですね。1つの僕からのメッセージに対して、また新しい方向からアプローチの仕方が足されて、よりそれが綺麗に見えるようになる。でも、そういう印象でインプットしていたので、インプットとイメージが混ざっちゃうとわけ分かんなくなっちゃうんですよ、「どっから吸収したっけ?」って(笑)。

Q19:Lucky Kilimanjaroを知らない人に聞いてほしい1曲は?

やっぱり新しい曲ですね。『FRESH』を聴いて欲しいです。今自分の伝えたいことは1番新しい曲に入っているので、新しい人に聴いてもらうならやっぱり1番新しいメッセージを届けたいです。

Q20:普段は言えない、メンバーの皆さんに伝えたいことはありますか?

うちのメンバーには、情報の共有や意見をちゃんと言うようにしているので、あまり無いかな。仲が良いのもありますけど、ちゃんとお互い信頼感があるので。
でも、強いて言うなら、これ口酸っぱく言ってるんですけど(笑)、To Doリストを作って欲しいです(笑)。すぐに忘れるんですよ、やることを。来週までにこれやっといてねってみたいなやつを、「すみません、忘れてました」みたいな(笑)。因みに僕はガチガチに作っています(笑)。仕事もやりたいことも毎日どんどん増えて、毎日どんどん消すみたいになってますね。

Q21:最後に、今後挑戦したいことを教えてください。

ずっと自分の中では、雲海の上でMVを撮りたいというのがあります。あと、登山して雲の下で撮りたいですね。メンバーにゲーム実況もやらせたいです(笑)。個人的には、デザインを勉強したいかな。Lucky Kilimanjaroの活動にも役立つだろうし、自分としても面白そう。
そういう感じのノリでやりたい事を考えてますね。バンドとしてやりたいことは、バンドとしてやるべきで、やって行きたいっていう感じだから、あんまり欲望っていう感じじゃないのかな。
あとは今年ずっと休まずやってきたんで、温泉に行きたいです(笑)。

Photographer:Kotetsu Nakazato
Interview&Text:Ayaka Yoshimura

【Lucky Kilimanjaro】
“世界中の毎日をおどらせる”
音楽には誰かの背中を押したり、新しいアイデアを与えられると信じています。
みんなが前向きになれるような、ワクワクする音楽をつくります。
2018年11月メジャー1st EP『HUG』リリース。

公式サイト:http://luckykilimanjaro.net/