【インタビュー:前編】NYと日本で活動中。異業種4人のアーティスト集団「コペルズ」って何者?

いろんなことがシームレスになってきた今、アーティストは自分のフィールドに留まらず、様々なコラボレーションを通して新たな価値を生み出す。NYと日本で活動を展開する、「コペルズ」もその一つ。彼らは、画家・イラストレーター・フォトグラファー・美容師という異業種の4人からなるアーティスト集団だ。「子ども達の為に」というコンセプトを掲げ、エキシビションやワークショップなどを開いている。

メンバーは以下の通り(カッコ内はニックネーム、プロフィールの詳細は最後に掲載)。

Masaya Nakayama:(まーさん):画家

Seiji Matsumoto:(せいじ):イラストレーター

Toyohiro Matsushima:(まっちゃん):フォトグラファー

Kotaro(こうたろう):美容師

全員が、日本と海外を股にかけて活躍している。2人はNY在住、もう2人は東京在住であり、これまでにNYと東京でイベントを開催してきた。個々の活動が充実しているにも関わらず、彼らはなぜ、“コラボレーション”を選んで行動するのだろう?

今回は、NYと日本をオンラインで繋ぎ、対談形式で4人にインタビューをさせて貰った。前編ではまず、メンバーの関係性に焦点を当て、結成に至る経緯や想い、コラボレーションによって生まれる化学反応などについて、ざっくばらんに話して貰った。

結成までの経緯と想い

―異なる分野で活躍されている皆さんですが、4人はどのように出会ったのですか?

Kotaro:まーさんとまっちゃんが、元々友達だったんですよね。それとは別の時期に、せいじさんと僕がNYで出会って。その後、「Bushwick Open Studios」というNYでのアートイベントの時に、それぞれエキシビションをしていた、まーさんとせいじさんが知り合いになり、僕にも紹介して貰ったのがきっかけです。お互いの、人との繋がりが基になった出会いですね。みんな関西人です(笑)

Masaya:それで2017年末のクリスマスに、日本でみんなで飲む機会があったんです。このメンバー以外の人もいましたけど。確か2軒目のバーで、お互いの活動の話をしていたんですが、そこで「みんなで何かやりたいね」といった事を、酔っ払いながら(笑)話していました。その後どうなったんだっけ?

Kotaro:具体的にアクションが起こったのは、少し後ですかね。日本で、まーさんとせいじさんが少し話を進めていたんですが、2018年9月のイベント初開催までは、月1回程度のオンラインミーティングを続けていました。最初は日本でイベントをやる方向で考えていたんですけど。

Seiji:そうそう。それで、こうたろう君のNYのサロン(兼スタジオ)を使える、という話になったので、NYでエキシビションを開く事になったんでした。

―「子ども達の為に」というコンセプトに込められた想いを教えてください。

Kotaro:みんなでお酒を飲んだ時に、今の世界の問題などについて話し合う事が多かったんですね。そんな時、まーさんが以前、学校で美術の先生をしていたのもあって、よく「子ども」というキーワードが出ていたんです。4人の方向性を決める時に、将来の子どもたちに“残したくない課題”について考えて、それに対して行動を起こす集団になりたいね、という話になって。そこからコンセプトを決めていきました。

―「コペルズ」という名前の由来はなんですか?

Kotaro:これは、“コペスニクス”から来てるんです。と、言うのも実は、話題になった「君たちはどう生きるか」という本や漫画、あの主人公の”コペルくん”が由来で。メンバーみんながあの本を読んでいて、よくその話で盛り上がっていたんですよ。自分たちもコペルくんみたいに、気付いて、行動を起こす集団でありたい!という気持ちで「コペルくんの集合体」=「コペルズ」にしました。僕らにとって、その本の存在は大きかったですね。あと、正直に言うと、具体的なコンセプトや名前は、後付けで決めていったんです。結成した時は、とにかく今、自分たちで何かやらなくちゃいけない、という想いが一番強くて。それが活動を始めた原動力だったと思います。

コラボレーションの源

昨年9月にNYで開催したエキシビション「Plastic Whale」の準備風景

―活動する中で、お互いに刺激を受けるのはどのような時ですか?

Masaya:常に刺激は受けていますね。例えば、本当に最初からですけど、僕は初めてこうたろうと飲んだ時に聴いた“美容師あるある”みたいなエピソードを、よく覚えています。

Kotaro:僕は、覚えていないです(笑)

Masaya:そうやろうな(笑)。その時、美容師の料金の付け方について話していて。具体的には、美容師さんって、自分のお客さんを獲得するために、最初は安めのサービス料金を設定するけど、その後に高くなったりするじゃないですか。でも、「僕はそれはおかしいと思うんです!だって、お得意さんになってくれて、その人との関係が深まるんだから、本来は安くなるべきじゃないですか!」とか、熱く語っていて。こんな考え方の美容師さんもいるんだなぁって思いましたね。

Kotaro:へぇ〜(笑)

Masaya:あとは、せいじは自分と同じ絵を描く人だけど、イラストレーターの仕事や絵の描き方を、こんなに間近で見たことはなかったので、興味深いですよね。

Seiji:僕も、同じような感じ。イラストレーターなので、普段は一人での作業が多くて、実際に現場を見る事は少ないんですね。でも、コペルズのイベントなどでは例えば、まっちゃんが写真を撮っている現場を直に見る訳です。そうやって、各々のフィールで、それぞれが闘っている“戦場”を見られるというのは、すごく面白いですね。こういう事を気にして、みんな仕事をするんだなぁとか、そういう事を知れるのは、刺激になります。

Toyohiro:そうですね。違う部分を見るのも楽しいんですけど、個人的には、人としての“匂いが似ている”のが「コペルズ」かな、と思っていて。

Masaya:一番ええこと言うなぁ!(笑)

みんな:(笑)

Toyohiro:なんか似てるんですよね、仕事は違うんですけど。みんな適当そうに見えて、実はめちゃくちゃ繊細だったりとか(笑)。人が言った何気ない一言をすごく気にしたりとか、そんな部分がそれぞれの仕事に活きているところがあって。フィールドは違っても、一緒にいると、とても似ていると思います。

―なんとなく似ている4人、と言うお話もありましたが、お互いにどのような印象を持っていますか?お一人ずつに対して、皆さんからコメントをお願いします。

①Masayaさん(画家)へ

Kotaro:ずーっと何かを考えて続けている人かな、と思います。他のメンバーもみんな熱いんですけど、特に一番熱いかも。

Seiji:あと、よく泣く!

みんな:うん、泣いてる(笑)

Kotaro:愛を感じますね。まーさんは。

②Seijiさん(イラストレーター)へ

Masaya:せいじの良いとこ言わなあかんのか…。

Kotaro:思いつかへんなぁ(笑)

Masaya:お嫁さんが優しい。かわいい。

Seiji:おーい!嫁かーい!

Toyohiro:僕は、せいじさんがいる事で、コペルズの活動のバランスを取ってくれている、と思っていて。僕ら、それぞれキャラ濃いんですけど、せいじさんがそれをどっしり受け止めてくれているというか。バランサーだと思っています。

Kotaro:確かにその通りですね。

③Toyohiroさん(フォトグラファー)へ

Kotaro:目線が面白い人ですね。人と違う見方ができる人。みんなが同じ方向しか見れていない時も、まっちゃんが違う方向から出してくれたアイデアとかが、コペルズの活動にも活きていることがあります。

Masaya:うん、面白いよな。常に何かを起こすんですよね、事件も含めて(笑)。何かあるんです。本人が慌てている時とかも、こちらはちょっと笑ってしまうというか。かわいらしいんですよね。

Seiji:発想とかが、面白いですよね。目の付け所がすごいです。

Toyohiro:これ、恥ずかしいですね(笑)。

④Kotaroさん(美容師)へ 

Kotaro:ちゃんと褒めてや〜(笑)

Masaya:こうたろうの一番の魅力は、人と人とを繋げてくれるところやないかなぁ。

Seiji:そうですね。そういう才能がもう、すごいなって。しかも、いやいやとかではなくて、本人も楽しんで、気持ちよく繋がりを作ってくれるんです。

Masaya:そうね。アーティストって、実はそういう所に無頓着というか、人間的な付き合いがそんなにうまくなかったりすると思うんです。でも、こうたろうはそこを全部支えてくれる。僕らが何も気にしなくても、自然と繋げてくれてますね。

Toyohiro:本当に、人生で出会った人の中でも、一番コミュニケーション能力が高いと思います!人生3回くらいやり直してるんじゃないか?って思うくらいですね(笑)。

Masaya:ほんまにそれはそうやな。

コラボレーションが生む化学反応

NYでのエキシビション「Plasric Whale」(詳細は後編で紹介)

―いま語って頂いた、それぞれの特長は「コペルズ」の活動でどのように活きていますか?

Kotaro:僕らは、それぞれに強みを持っていますよね。みんな、コペルズの活動に対して自分が還元できる所を探してやっているというか。そして、それをお互いリスペクトし合って活動できている気はします。

Masaya:そうやなぁ。実は、「コペルズ」のロゴの4色は、それぞれのメンバーを表していて、個人的にはその配色がすごくしっくりきていて。例えば、「ル」の青がせいじなんですけど、落ち着いた色で、真ん中で支えてくれている感じとかが、本当、その通りだなって思います。

Kotaro:あ、そうそう!「コ」の赤が僕で、「ペ」の黄色がまっちゃん、「ズ」の緑がまーさんなんです。前半2文字の僕とまっちゃんが、あぁでもない・こうでもない、って言っているのを、次にせいじさんが受け止めてくれて、最後に「ズ」のまーさんがしっかり見てくれている感じなんですよ。

Toyohiro:本当にこのロゴ、いい感じですよね(笑)!

Kotaro:ね〜。最初からそんな事は全く意図していなくて、みんながそれぞれ適当に、好きな文字と色を選んだんです。でも、それが結局バシっとハマったんですよね。これは運命的だったのかなと。

Seiji:そうだね(笑)

Kotaro:みんな言っていますが、僕らは、本当にバランスが良いと思っています。さっき言ったキャラクターに加えて、後半の「ル」(Seiji)・「ズ」(Masaya)はアーティスト気質が強くて、自分の表現をしていく感じだし。前半の「コ」(Kotaro)・「ペ」(Toyohiro)は、どちらかというと、周りや全体を見ていく感じなんですよね。なので、僕が拾った材料に対して、まっちゃんがさらにアイデアを出してくれたり、せいじさんがまとめてくれたりして。そして最終的には、まーさんが「コペルズ」としての核の部分、僕らに何ができるか、という事を判断してくれます。この4人だからこそ、本当にうまくチームが成り立っています。

―逆に、コラボレーションする時に難しい部分はありますか?

Kotaro:みんな忙しいのと、住んでいる場所が離れているので、やっぱりそこは難しいですね。コペルズとして、次々にアクションを起こせる訳ではないので。でも、それぞれが違う所で活動しているからこそ、見る世界が広がっているんだと思います。コペルズの活動は日本国内でだけ、という考えではなくて、実際にNYでもイベントを行ったように、世界に向けてやっていきたいものなので、あまり場所に捉われないようにやりたいと思っています。

 

(後編に続く)

 

小気味よく会話する4人の空気感が伝わっただろうか。対談をする中で、真っ先に伝わって来たのは、4人の素敵な関係性とお互いに対するリスペクト。アーティストである以前に、一人の人間同士として「何か一緒にしたい」と思えるからこそ、それぞれの専門性や強みがいっそう引き立つのだろう。それが具体的なアクションを導き、強いメッセージが込もった新たな表現に繋がっていく。アーティスト同士のコラボレーションの魅力は、ここにあるように思う。

次回の後編では、「コペルズ」のこれまでのイベントや、今後の活動について詳しく話を聴いていく。さらに、現在NYを拠点に活動する美容師・Kotaroさんに個別インタビューを行い、自身の経験やこれからの“アーティスト”について思うことなどを語って貰う。


【「コペルズ」公式】

HP:https://www.coperus-kids.com

https://www.instagram.com/coperus_kids/

【メンバープロフィール】

MASAYA NAKAYAMA / Painter:大阪芸術大学卒業。教員として教育の現場を学んだ後、2012年に渡米。子どもをモチーフに、現代に生きる私たちが本当に大切にすべきものを問う作品を多数発表。アートを通じた教育面での活動も精力的に行っている。現在はNYのブルックリンを拠点とし、国内外のギャラリーや美術館等で活躍する注目の現代美術作家。

http://www.masayanakayama.com/

SEIJI MATSUMOTO / Illustrator:イラストレーター兼アーティスト。主に人や動物をモチーフとした優しさとゆるさが溢れるスタイル。その作品には、めまぐるしく変化する日常や社会において人々の心を和ませたいという思いが込められている。 これまでに、「The New York Times」や「McDonald’s」など国内外の様々なアートを手がけている。

http://seijimatsumoto.com/

TOYOHIRO MATSUSHIMA / Photographer:携帯電話で撮った写真で受賞し、自分だけの職業『photo creator』として独学でキャリアをスタートさせる。Michael Jackson、Madonnaが奪い合ったダンサー・KENTO MORIから絶賛されるなど、国内外で数多くのアーティストから指名を受けている。

https://s2toyou.tumblr.com/

KOTARO / Hair stylist:2010年に神戸の美容室「TICK-TOCK」に就職。当時最速でスタイリストデビューし、独自のレッスンや集客法でアシスタント時代から多くの顧客を持ち、業界紙でも取り上げられる。24歳で最年少「STEP BONE CUT」認定講師。2016年からNYへ移り「STEP BONE CUT」を拡げるための講師活動をスタートさせる。同時に撮影、イベント開催、ギャラリー、シェアハウス運営など活動は多岐にわたる。

https://www.stepbonecut.com/