POSTED ON 2019年3月4日 1 MINUTE READ BY 川崎碧
“PRODUCT BAG” “PUBLIC TELEVISION” “SOUND DESIGN” “QUESTION EVERYTHING” “LOGO” “AIR” “NATURAL WOMAN” “STANDING”…
これらはVirgil Abloh(ヴァージル・アブロー)が彼のクリエイションに「書いて」きた単語のほんの一部分である。
考えたことはないだろうか。VIRGIL ABLOH(ヴァージル・アブロー)のクリエイションを見て「この単語はどういう意味なんだろう」と。
「疑問の投げかけ」「歴史の解釈」「哲学の表現」。これらアートの根本のような要素が、一つ一つの単語には含まれている。 そして彼の作り出したもののアートとしての側面を知ることは、スタイリングなどとは全く別の、きらめきに似た何かを与えてくれるだろう。
100はとうに超えたであろうそれらのすべてを書き起こすことは難しい。彼の世界観を覗くこの連載では、
1. “INCOMPIUTO”
2. “COLOR THEORY”
3. “SCULPTURE”
この3つにフォーカスしていこうと思う。
“INCOMPIUTO”、不完全の中に見える「誕生」を見つめて
1記事目では、2019-2020 AWパリファッションウィーク前にアブローが行ったエクスポジション”INCOMPIUTO”について追求する。
“The present—our generation grown up before and after the Internet—may be a new Renaissance.”
「僕たちはインターネットを基準にして、新たなルネサンス期にいる。」(KALEIDOSCOPE より)
インタビュアーALESSIO ASCARI(アレッシオ・アスカーリ)との対談、先日発行されたKALEIDOSCOPEにアブローがこう言った。
共同アートエクスポジション”INCOMPIUTO”を彼とパリで行ったアーティストグループAlterazioni Video(アルテラツィオーニ・ビデオ)を代表する著書“Incompiuto : The Birth Of A Style”のテーマは見ての通り、ルネサンスよろしく「誕生」だ。
エクスポジションだけではなく、今回のOFF-WHITE c/o Virgil Abloh(オフ・ホワイト)のコレクションの舞台セットやスタジオシューティングにもアルテラツィオーニ・ビデオはメインに携わり、Incompiutoと書かれたアイテムも発表された。
この数日、2019AWコレクションにポップアップショップの”FLORAL SHOP”、そしてこの”INCOMPIUTO”と、明らかにスケジュールを詰め込んでいる彼の理想を見るためにも、連載第一回ではこの”INCOMPIUTO”プロジェクトを見てみようと思う。
“COLOR THEORY”、モノクロの世界に色をつける
連載2回目には、彼のLOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)でのファーストコレクションにつけられたタイトル “COLOR THEORY”について。
それはカラフルなコレクションというだけではない、アブローらしいもっと深い意味合いのある題だ。
“It was a way of critiquing the fashion industry that existed, how monotone it was. (…) I wanted to preach the full scope of the real world, made up of many colors.”
「あれ(ファーストコレクション)では現代のファッション産業がモノトーンだって批判したかったんだ。リアルワールドがたくさんの色でできてるって伝えたかったんだよ。」(KALEIDOSCOPEより)
東京は原宿でも虹色の像が建てられた。連載第二回では黒と白の間をとる「オフホワイト」のデザイナーが、ルイ・ヴィトンで世界に与えるCOLOR THEORY=色彩を生み出した背景と理由について見ていきたい。
“SCULPTURE”、バッグと彫刻の違いとは
そしてこの連載は、”SCULPTURE”(:彫刻)で締めくくる。
バッグに “SCUPTURE”と書いて、「バッグ」と「彫刻」の明確な本質の違いを購買者(鑑賞者)に問う。今回の冒頭で話した「疑問の投げかけ」だ。
アートと比較されることもよくあるファッションだが、比較されるということはつまり「別物」として認識されていることに違いない。
だがアブローはその考えに一石を投じたこととなる。彼はこの二つを比べるのではなく、両者に違いがないことをこの一単語に込めた。
クリエイター本人の哲学を内に秘めているその性質は、アートそのものでもある。
“単語”:アートへのイントロダクション
ヴァージル・アブローは確かに「バズった」。しかし彼の創ったものをしっかり見つめれば、彼に対して簡単に「バズった」なんて言葉を使うべきではないことがわかるだろう。
「バズった」おかげでファストファッションしか身につけない人でも、オフ・ホワイトとNIKE(ナイキ)のコラボであるTHE TENのスニーカーを喉から手を出して安価で手に入れたがる人がいる今の時代で、その内面を見ないのはまるで滑稽だ。
THE TENの人気をご存知ない方はヤフオクかメルカリを見ていただければ一目瞭然だろう。最も高額なもので言えば、転売価格が定価の20倍を超すものも出てくる。
“単語”はかっこいいだけではない。アブローのアート観をよりわかりやすく見ることができるイントロダクションのようなものだ。
他のアーティストとのコラボレーション、現代社会への批判、服を媒体にしたアート。彼の単語に導かれるままに、この3つをこれからの連載で明らかにしていきたいと思う。
【連載】“単語”で紐解くヴァージル・アブロー